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大崎善生『九月の四分の一』

九月の四分の一
九月の四分の一
posted with amazlet on 06.08.24
大崎善生
新潮社 (2006/02)

大崎善生さんの短編小説集です。表題作を含む四作が収録されています。

第二次世界大戦の混乱期を乗り越えた日本人男性と英国人女性を描いた「ケンジントンに捧げる花束」以外の3作品は、惹かれ合いながらも結びつかない男女を主人公として、その世界観を象徴するような音楽で彩りを加えた作品です。著者の尊敬する村上春樹さんを思わせる作品というと想像が付きやすいかと思います。

この著者の作品の良さの一つは、登場人物の葛藤や絶望といった心理的な変化の重みを裏付ける丹念な背景描写にあると感じていますので、こういった短編ではそれが十分に生かし切れておらず、雰囲気だけの小説になっている点は否定出来ません。その一方で、この作品全体を貫いた空気感の清らかさのようなものは今まで以上に際立っている印象を受けました。文学作品としての面白みはそれほどないのですが、肩肘を張らずに小説を読むということの幸福感を与えてくれる作品だと思います。

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