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宮城谷昌光『香乱記』

香乱記
香乱記
posted with amazlet on 06.11.12
宮城谷昌光
新潮社

秦末に活躍し、後に司馬遷の史記列伝にも載せられることになった斉の田横を主人公にした全4巻の歴史小説です

助けた著名な人相見に王になると予言された青年が、秦の官吏に故郷を追われる形となり、その旅の中で秦の皇太子・扶蘇の隠し子と出会うことにより、徐々に歴史の表舞台での動きと密接な関わり合いを持つようになっていきます。運命に引き寄せられるように王への道へと向かっていった者が、世の中を正そうと起した行動がことごとく結果に結びつかず、最後には運命に流されていく結果となる悲劇的な小説とも言えます。

秦末漢初の英雄というのは、項羽にせよ劉邦にせよ、程度の差こそあれ自己の欲望に忠実な人物が多く、後生の人から見ると親しみを尊敬を覚えるような人物ではありません。そういった中で、侵略戦争を否定し、節義を守り通した結果滅びた田横という人物の最後は司馬遷が列伝の最後に記述しているように残念なものであるのは確かです。ただし、戦国の世と秦の苛政で苦しんだ当時の人々にとって、その王に問題があるにせよ強い政権による安定というのは何にも代え難い物であるのも確かです。少なくとも、その後に続く漢の文帝や景帝の治世を考えると、政治というのは現実的には、そこに至る手段というのをある程度目を瞑らないといけない場合もあるということでしょうか。

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