« ジョン・ダワー『敗北を抱きしめて―第二次大戦後の日本人』 | Home | 渡辺千賀『ヒューマン2.0―web新時代の働き方(かもしれない)』 »
ジェフリー・S・ヤング、ウィリアム・L・サイモン『スティーブ・ジョブズ-偶像復活』
東洋経済新報社
Appleのスティーブ・ジョブズCEOの半生を描いた作品。Appleは出版停止を求めたが、出版者側が拒否したというエピソードがあります。
世間的なジョブズ氏像というのは、ユーザーが喜ぶものを知っている優れたビジョナリストというものでしょうが、本書でのジョブズ氏というのは、「自分が手がけたヒット作を生み出したい」という自分勝手な動機から、創業者としての立場を利用して、他の従業員の作品に首を突っ込んでは過大な要求を突き付け、気に入らないからと功労者を追い出したり、他社との契約にサインにしなかったりと相当なトラブルメーカーとして描かれています。
その一方で、ケチで扱いにくい上司にも関わらず、ジョブズ氏が出来ると言えば、周りもいつの間にか出来ると思ってしまうなど、類い希な能力を持ったアジテーターという側面もあります。本書の原題の「iCon(偶像)」はジョブズ氏の持つ、実態が空虚に見えるけれども人々を魅了してやまない特徴、というものをうまく表現した言葉だと思います。
本書の読みどころは、ジョブズ氏がジョン・スカリーCEOと対立し、Appleを追い出される場面や、ピクサーの契約を巡って、ディズニーのマイケル・アイズナーCEOと対決する場面でしょう。こういった対人的な問題を抱えた場面ほど、ジョブズ氏の感情の起伏の激しさが臨場感を持って描かれています。逆にAppleに復帰してからの描写は、会社としての事実関係と並べているだけで、ジョブズ氏個人の考え・行動が十分には描かれていないと思います。
