« 渡辺千賀『ヒューマン2.0―web新時代の働き方(かもしれない)』 | Home | 筋トレに最適な音楽が無料で手に入るExercise.com »
リーナス・トーバルズ、デビッド・ダイヤモンド『それがぼくには楽しかったから』
小学館プロダクション
Linuxの開発者リーナス・トーバルズの半世紀。フィンランドでLinuxの開発を始める経緯から、Linuxが多くのIT企業がビジネスとして関わるようになるまでの経緯が描かれています。
Linuxという世界を変えるOSを作り出した一人のハッカーを突き動かしていた背景というものがよく分かる作品です。序章でトーバルズ氏は、人生を動かす三つの原動力、「一つめは生き延びること。二つめは社会秩序を保つこと。三つめは楽しむこと。」について語っています。これはマズローの自己実現理論にも似てますが、トーバルズ氏が社会との秩序を保ちながら、自分が純粋に楽しめることを追究していった結果として、現在のLinuxがあることがよく分かる言葉だと思います。
ただし、本書の中でのトーバルズ氏は、自分が好きなことをやれればいい、という清貧なギークであるとは言っていません。ミニックス開発者のタネンバウム教授との論争は、自分の社会的名誉を保つための闘いでしたし、ストックオプションを保有するRedHatやVAリナックスの上場で株価チャートにかじり付く姿などはお金にまったく興味がないというわけでもないということを示しています。
とはいえこれは、子供が増えればもう少し大きな家に移りたい、というごく普通の考えに過ぎません。本書を通じて感じるのは、彼が過剰を好まないという点です。著作権などの問題に対しては、権利を保有するということはそれ相応の義務が生じる、という考え方ですし、マイクロカーネルやGPLなどに必ずしも賛成をしないのは、設計やライセンスに対して純粋すぎて必ずしも現実と相容れない点でしょう。極端な理想主義に傾倒せず、いつも柔軟さを持ち続けた点こそ、Linuxがビジネスとも調和して発展していった背景にあると思います。
