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ロバート・ルービン、ジェイコブ・ワイズバーグ『ルービン回顧録』
日本経済新聞社
民主党のビル・クリントン政権での第70代財務長官として、「アメリカ始まって以来の名財務長官」と呼ばれることもあるロバート・ルービン氏の自伝です。
本書では、ゴールドマン・サックスに入社し、裁定取引の専門家となり、共同会長にまで上り詰めた26年間、ホワイト・ハウスと財務省で、政府の巨額の財政赤字を解消しつつ長期にわたる国内経済の発展を促し、メキシコ金融危機やアジア通貨危機に対処した6年半、そしてシティグループ会長としての現在までの間に、どのような意志決定を行ってきたかの背景が、本人により解説されています。彼の生涯を通して一貫していたのは“蓋然的アプローチ”に従った意志決定です。
「必然的」の反対語である「蓋然的」なアプローチとは、世の中に確実なものなど何もなく、物事を多角的に分析し、その確率を天秤にかけた上で意志決定するという手法です。ゴールドマン・サックス時代の裁定取引で、期待値がプラスで、例えマイナスが実現しても許容範囲と判断した取引で、結果的に大損失を出した時でも、その決定に後悔を見せないのは、結果ではなく意志決定のプロセスに重点を置いたルービン氏のスタンスがよく現れています。また、物事は複雑であるために多角的な分析が必要であり、どんな理論も未来を保証するものではないと信じているからこそ、他者の意見を尊重し、徹底的な議論を重視し、そこから得られるものを謙虚に学ぼうとします。
「著者ノート」の中に、本書の元となったニューヨーク・タイムズ・マガジンの記事を野球チームの監督がオフィスに貼っている、というエピソードが登場していますが、この作品は全ての章に渡って非常に示唆に富んだ内容で、金融や経済に関心のある人だけでなく、何らかの意志決定をする機会のある人、つまり全ての人にとって極めて有意義な作品だと思います。
