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リチャード・P・ファインマン『困ります、ファインマンさん』
岩波書店 (2001/01)
ノーベル物理学賞を受賞した物理学者・リチャード・P・ファインマンの逸話集。前作『ご冗談でしょう、ファインマンさん』に続く作品ですが、前作のように時系列には編集されていません。その理由や“ファインマン・シリーズ”の出版経緯に関しては巻末で立花隆氏が詳しく解説しています。
最初の妻・アーリンとの出会いと死別を描いた「ひとがどう思おうとかまわない!」のように心にジンと来るエピソードもあれば、日本滞在を描いた「シャベルを持っていきましょうか」を初めとして前作と変わらない面白おかしいエピソードも多数収録されています。とはいえ、本書のメインは全ページ数の約半分を占める「ファインマン氏、ワシントンに行く」であるのは間違いありません。
このエピソードでは、1986年のチャレンジャー号爆発事故調査委員として原因究明に奔走した際の顛末が描かれており、ファインマン氏が偉大なる科学者である理由がよく分かります。委員就任要請があった時、ファインマン氏は政治には関わらないことにしているため、最初は断ろうとしますが、妻グウェネスに「あなたが行けば、十一人は一緒になってあちこちを調べ歩くでしょうけど、十二人目のあなたはひとりで飛びまわって、ひとの考えないようないろんなことを調べることになるでしょ。」と説かれて委員に就任し、妻が予言した通りの類まれなる行動力で原因解明に成功します。
委員会のスケジュールとは別に、現場の技術者との会話を重視したファインマン氏は、委員会の秩序を重んじるウィリアム・P・ロジャース委員長としばしば対立しながらも事故原因とNASAの組織体質の問題点に迫っていきます。公開会議での氷水を使ったOリング弾力性消失の実演やファインマン氏の報告書を委員会報告書に入れる際の内なる闘いなどは、調査委員としての活動のあり方や難しさを感じさせるエピソードです。
最後の章では「科学の価値とは何か」という題名で行った1955年の講演の内容が収録されています。マンハッタン計画に関わった科学者として、原爆がもたらした被害を前に、科学の存在意義に疑問を感じ、自問した結果導き出された結論がこの講演の内容です。人間は間違いを起こすことがあるかもしれないが、その結果から学び、未来のために歩みを止めるべきではないという全人類へのエールとも受け取れる非常に印象的な講演です。
