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周大荒『反三国志』

反三国志〈上〉 (講談社文庫)
反三国志
posted with amazlet on 08.01.26
周大荒(著) 渡辺精一(訳)
講談社 (1994/12)

『反三国志(演義)』は20世紀初めに書かれた歴史小説です。著者は中華民国の司法官を務めた孫文派の官僚・作家で、本書の中での蜀の北伐は中華民国期の北伐と重ね合わせているという指摘もあります。

この作品では、劉備率いる蜀の英雄達が魏呉を打ち破って中国を統一し、漢王朝を復興させるというストーリーが描かれています。劉備の軍師・徐庶への偽手紙の計略が見破られ、徐庶が劉備の配下に留まり、病の床にあった劉表から荊州を譲られ、劉備が中国統一への足掛かりを得たところから話は始まります。

読んだ感想としては、あまりにも単調で退屈な作品という印象を受けました。話の大部分が戦闘の描写で、それもずっと蜀の将軍のターンです。魏・呉の将軍たちの計略はことごとく裏をかかれ、蜀側が危機に陥ることもほとんどなく、一般的な歴史小説に見られるドラマ性は皆無と言っていいでしょう。個々の登場人物に関しても、内面的な部分が十分には描ききれていないようです。話の時間軸と異なる活躍年代の登場人物が出てくるのはいいとして、全体を通して他の人がプレイしているコーエーの「三國志」の画面を横で見ているだけの状態と近いものを感じました。中学生の頃に、今戸栄一訳を読んだ時はもう少し面白いと感じたのですが。

この作品を特に推薦したいとは思いませんが、冒頭に掲載されている周大荒氏による著者独言について一言だけ。著者はこの中で、次世代の王朝によって編纂される「正史」の内容の妥当性に疑問を呈し、それに対抗する形で当時の人々が書いた「野史」の歴史資料的な意義を高く評価しています。その一方で、「正史」をモチーフに後世の人によって書かれた『三国志演義』が広く読まれることにより、「野史」が誤解されることを憂いています。しかし、正当な「野史」であると著者が判断し、この作品の元になった『三国旧誌』という作品自体の正当性の主張が意味不明で、オカルトチックにすら感じられます。「これこそが信頼できる「野史」である」と述べる周大荒氏の主張自身が、歴史に対する冒涜とも感じられ、余計な独言だなと感じました。

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