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中村俊輔『察知力』
サッカー日本代表の中村俊輔選手の著作。中村選手が現在までのサッカー人生を振り返り、これまで数々の障害を乗り越えられてきた要因として述べているのが、タイトルにもなっている「察知力」というキーワードです。
本書の執筆の動機になったのが、自身の経験から得られた「察知力」というものが、人間が成長するために不可欠な力であり、アスリートに限らずあらゆる仕事をしている人にとって有用だと感じたからだそうです。そのため、会社組織などで働く人の経験とも重なる部分を意識した表現をしている印象を受けます。
「察知力」は、いくつかの力から構成されています。うまくいかない状況に直面した時、その原因を察知する力。組織や自分に求められているものを察知する力。目標を達成するために必要なものを察知する力。「察知力」とは、単純に“空気を読む”ということだけではなく、自分の強みと弱みを把握し、それを伸ばしたり補ったりするには何をすればいいのか見つけ出す、戦略的な能力を指しています。
中村選手は自分のことを、ロベルト・バッジオやマラドーナ、ジダンのように“どこに行ってもその人を中心にチームが作られる選手”ではないと認識しています。そのため、監督の交代やフロントの方針などで外部環境が変わっても必要とされ、試合に出続けられる選手にならないといけないと考えています。それを実現するのが選手としての引き出し(対応能力)を多くすることであり、ポリバレントな選手になることだと述べています。
トルシエ監督時代の日本代表では、本来のトップ下ではなく、左サイドで起用されることが余儀なくされましたが、サイドライン近くのスペースの少ない場所でのプレーなどを学び取ります。海外移籍の際も、自分のプレースタイルとは必ずしも合致しないセリエAを選び、そこで守備面でも貢献できる能力を磨きます。それが、プレーの幅を広げ、その後のスコットランド・プレミアリーグでのMVPの活躍などにつながっていきます。
本書の狙いは上述した通りですが、この本を読み終えた感想として、十分に達成されていると思います。どの職場環境でも、自分の得意分野だけを追求していける人は稀ですし、仕事の仕方も会社の方針変更や人事異動などにより、数ヶ月単位で一変してしまいます。その中で、それらの変化にどのように対処し、どう乗り越えていけばいいのか。“天才”と呼ばれるサッカー選手でさえも同じような壁を経験し、それを克服してきたからこそ“天才”と呼ばれるようになったのだと勇気付けられる良書だと思います。
